2006年07月02日
7月2日
平成12年7月2日・・・
それはちょうど6年前の今日、梅雨明け間近い7月2日でした。
その日私は・・・・・死にかけた。
(文章だけ!ちょっと長いです。)
それはちょうど6年前の今日、梅雨明け間近い7月2日でした。
その日私は・・・・・死にかけた。
(文章だけ!ちょっと長いです。)
平成12年夏・・・
この年は梅雨明けがはっきりしなくて、「もう、明けたんじゃないの?」と思わせるようなお天気が続いていた。毎日朝から晴れ渡り、午後から雲が出て来て夕立が来るというような感じのお天気だった。この日も・・・やはり良いお天気で、空は晴れ渡っていた。
当時私は、ダイエットを兼ねて自転車でツーリングするのが休日の楽しみ方だった。
買ったばかりの新しい自転車(MTB)に乗ってあちこち走り回っていた。学生時代に乗っていた頃の往年のパワーは望むべくも無かったが、それでも徐々に長い距離も走れるようになり、この日初めて、人吉ー八代往復ランに挑戦することにした。
【人吉ー八代往復】距離にして100kmあまり・・・
自転車に乗り慣れている人には大した距離ではないが、自分は数年ぶりに自転車を再開して二ヶ月ほど。
それでも・・・この少し前には70km走っていたし、このコースは特にきつい登り坂も無いので、100km程度は問題なく走れるはずだった。
人吉ー八代間は、急流で知られる球磨川の両岸を、国道219号線とJR肥薩線が交互に場所を分けあうようにして走っている。川の両岸は山が迫り出しており、V字谷の底を走るような格好だ。
さて・・・
この日は午前10時に人吉をスタート。
人吉から球磨村に入り、途中、R219から交通量が少なくのんびり走れる、JR線沿いの旧道に入り八代を目指した。順調に行けば3時間ちょっとで着くはずだ。
気温は高いが、球磨川にせり出した山陰の旧道沿いは案外日陰も多く、岩肌からは清水が流れ出ていたりする。こういうところを通ると、暑い中にもフッと涼しい風が肌を撫でて、とても心地よい。
それでもやっぱり真夏の陽射し。汗がぽたぽたと流れ落ち、持参した1.5Lのペットボトルはすぐに空っぽになった。しかし体力的には問題なく、スローペースながら着実に距離をこなして行った。
やがて・・・3時間ほど走っただろうか?
八代まであと少しの所・坂本の道の駅へ到着。トイレと水分補給を兼ねて、しばし休憩する。
そしてふと・・・何気なく空を見上げると、さっきまで雲ひとつなかった空に、白い雲が湧き出している。
「うーむ・・・」
空を覆い尽くすというほどではないが、このところ夕立が多いので、雲が増えてきたのが少々気になった。
「帰り道に、雨に降られたら困るなぁ・・・」
この時、「引き返そうか・・・」という考えがなかったわけでもないが、目的地まではあとわずかだし、ここで引っ返すのももったいない気がする。雨が降りそうになったら、汽車に乗って帰るという手もある。
そう思って、「え〜〜〜いっ、行ってしまえっ!!」と、八代へ向けて出発した。
これが・・・数時間後に迫る恐怖体験の序章になるとは、夢想だにしなかった。。。
午後2時頃八代に到着。
あまりにのんびり走りすぎたせいで、予定時刻を1時間近くオーバーしてしまった。短い休憩を取った後、人吉へ向けて元来た道を引き返す。
そして八代から坂本に入り、空を見上げる。すると・・・さっき通ったときと違って青空は消え去り、行く手にはどんよりと黒い雲が垂れ込めているのが見える。
「これは・・・やっぱりあの時、道の駅で引き返すべきだったかな?」
そうは言っても、来た以上は帰らなければいけない。とりあえず行けるところまで行って、「雨が降りそうなら汽車に乗って帰ろう・・・」と考え、そのまま進むことにした。
そしてほどなく、先ほど休憩をとった坂本の道の駅に到着。行く手の空は、黒い雲がさらにどんよりと低く垂れ込め・・・雨よりも落雷が心配になってきた。
そっと耳を澄ますと・・・かすかに雷鳴が聞こえるような気もするが・・・まだまだ、ずいぶん遠くの方で鳴っているのだろう。
ここまで来たんだし、行けるところまで行って、やばくなったら汽車に乗ろう・・・ひょっとすると、雨は降らないかも知れないし・・・
・・・と、実に楽観的に考えて・・・再び人吉へ向けて走り出した。
それから十数分後、私は荒瀬ダムの水を満々とたたえる川沿いの道を走っていた。
このあたりは球磨川に沿って走る国道219号線の中でも道幅が広く、対岸はJR肥薩線の葉木駅を少し過ぎた付近だ。
普段なら快適に走れる場所なのだが、頭上には黒雲がますます低く垂れ込めてきた。
さすがに・・・ここまで走ってきたことを少々後悔し始めた。まだ雷鳴こそ聞こえないが、頭上にあるのは間違いなく雷雲だろう。
もしここで雷雨に襲われた場合、肥薩線は川の対岸を走っており、あと数キロ走らなければ橋がない。しかも、ちょうど民家が途切れたような場所なので、近くには避難できそうな場所も見当たらない。
とにかく、雨も落雷もないことを祈りつつ、やや急ぎがちにペダルを漕ぐ。
そして・・・・・・
しばらく走ったところで、突然道路右側の雑木林の付近で、【バーーーンッ!!】という音が聞こえた。何かが弾けたような音に聞こえたが、いったい、何?!
この辺りは山が球磨川の近くまで迫り出しており、雑木林は右手に高く見上げるような格好になる。
それと・・・気のせいか、道路沿いの電信柱の電線が【ピカッ】と光ったような気がした。
「・・・なんの音だろう???」
そう思ったのは、ほんの一瞬のことだった。
次の瞬間・・・
【バリバリバリッ!!ドッカーーーン!!!】
・・・と、 これまでに聞いたこともないような大音響に襲われた!!
まさに【肝がつぶれる】とは、こういうことだろう。
私は何が起こったのか瞬時に悟り、凍りついてしまった・・・そう、【落雷】である!!
「・・・・・・・!!」(声も出ない)
受けた衝撃は相当なものだったが、とっさに自転車を道路右端に走らせた。電線には避雷針があるので、この下なら多少は安全だと考えたからだ。
・・・で、状況としては・・・・・
最初の【バーン】という音と、その次の大音響の間合いからして、自分がいた場所から少なくとも100〜200m以内に【落雷】があったということ。
しかも落雷の音からして、相当エネルギーの大きいものだったということ。
それが枝分かれして、私が走っていた横数メートルの電線にも被弾したこと。
1発目が来たということは、続いて2発目が来るということだ。
しかも、隠れるところはどこにもない。
【うわぁ〜〜〜最悪だ!!】
普通は遠くで「ゴロゴロ・・・」と雷鳴が聞こえてから、やがてだんだん近づいてくるというというパターンが多いのだが、この時はいきなり1発目で「ドッカーン!!」とやられてしまったわけだ。
幸い、電線の避雷針のお陰で直撃を免れたものの、この雰囲気・・・2発目が来るのは間違いない。空は真っ黒に重々しく垂れ込めている。
「お、俺は狙われている・・・」と、心中おののきながら、「どうしようか・・・?」と、考えた。
このあたりには身を隠せる場所も無いし、これから雨も降りだすだろうし・・・屋外は危ない。
それで・・・【生命の危機】におののきながらも、次の集落まで全速力で遁走することにした。
・・・とはいっても、そこまでは2km程ある。極力落雷の危険を避けるため、出来るだけ身を低くして、なおかつ全力でペダルを漕ぎ続ける。
ほどなく、予想通り・・・1分と経たないうちに【バリバリ!ドッカ〜〜〜〜ン!!】と、2発目の落雷があった!!
谷底のようなところを走っているので視界が狭く、どの辺に落ちたのかわからないが、これもすぐ近くのようだ。
「つ、次は、俺に落ちるのか?!」
雷というのはもともと、人間には落ちやすいらしい。ヒトの身体は電気を通しやすいからだ。
やがて・・・道路沿いに立っていた電柱も、いつしか途切れてしまった。
電線には避雷針があるのだが、これが無くなったということは・・・かなり危ない。
「雷に打たれた瞬間というのは、どういう感じだろう?」
「ひょっとすると、前触れの静電気とかで髪の毛が逆立ったりするのだろうか?」
「直撃を受けたら、ほんの一瞬で絶命するんだよな・・・」
「もうきっと、痛みとか何も感じないんだろうな・・・」
いろんな思いが、頭をよぎる。
【サイクリング中の男性、落雷で死亡!!】
翌朝の新聞の隅っこに、こんな記事が載るかも知れない。
そんなことを考える間にも、5〜6発の落雷があり、そのうちのひとつは対岸200mぐらいの鉄塔に青白い稲妻が走るのが見えた。
うぅっ!!これは・・・我ながらとんでもない危険地帯に足を踏み入れてしまったものだ。
しかし、「もし自分に落ちたら、運がなかった・・・それだけのことだ!!」と、開き直って、なおも走り続けた。避難場所のないところで立ち止まれば、直撃を受ける危険が高まる。
普通ならとっくに息も上がって脚もパンパンに張って動かないはずだが、この時ばかりは苦しいとか何も考えず、とにかく走り続けた。この間、時間にして5分余りだったろうか・・・
やがて集落のあるところにさしかかり、道路脇のお堂が目に留まった。
「こ、ここだ、、、ハァハァ・・・」
ちょうど近所の方がいたので、一言ことわって軒下を借りることにした。
「神は我を見捨てなかった・・・!!」
このお堂・・・どこの神さんが祀られているか知らないが、「助かりました」と、一礼した。
この直後だった。大粒の雨が落ちてきて、瞬く間に地面を叩き始めた。
さらに落雷もさっきにも増してすさまじい勢いで、ほとんど間髪を入れず【ピカッ!!】と光ると同時に、
【シュパーンッ!!バリバリバリ〜〜ドッカーン!!】と、大気を切り裂く雷鳴が、谷あいの集落に轟いた。
落雷があまりにひどいので身の危険を感じ、思わずお堂の中に逃げ込んだ。
何発かは、お堂のすぐ近くにも落ちたようだ。
屋内とはいえ、こんな粗末なお堂では心もとない。屋根を突き破って落ちてきそうな勢いだ。すぐ前の国道は川のように水が溢れ、なぜか通る車もほとんどいなくなった。
そして・・・小一時間ほども続いた雷様の饗宴はようやく終わり、いつの間にか雨上がりの静かな山あいの集落の風情を取り戻していた。さっきまでの轟音が、全くウソのようだ。
雨はほとんど止んで雷も遠ざかって行ったが、さすがにもう自転車で帰る気力は消えうせて・・・近所の家からタクシーを呼んでもらい、最寄りの駅まで自転車ごと送ってもらうことにした。
帰りの列車の中、分解した自転車を抱えてボーーーッとさっきまでの出来事を振り返った。
「運が悪けりゃ、今ごろ雷に打たれて死んでたかもなぁ・・・」と。
・・・ということで、大げさではなく【生命の危機】を感じたことで、ただでさえ怖かった【雷】が、ますます恐ろしくなってしまった。
このあとしばらくは、雲ひとつない晴天の空の元でも、ときおり【雷光】が見えるような錯覚を覚えて、思わず【ビクッ!】と身体を震わすような、いわゆる【トラウマ状態】に陥ってしまいました。
もちろん今でも、雷は【大嫌い】であります。外で雷に遭ったら、一目散に逃げ出します。
でも、決して【ビビリー】と馬鹿にしてはいけません。雷鳴が聞こえた時点で、あなたはもう雷の【射程距離】に入っているのですから。
皆さんも外で雷に遭ったら、【まだ遠くだから大丈夫】なんてのんきに構えずに、一目散に逃げ出すことをおすすめいたします。
あ、それと【木の下】は一番やられやすい場所なので、雨宿りされる際は気をつけましょう。【木】に落ちた雷が、下で雨宿りしてる人に飛んでくるのです。【側撃】というやつです。
それから、人間が集団でいるのも雷様を呼び寄せるそうなので、ご注意を・・・
まあ、とにかく、これから雷の季節なので、アウトドアで楽しむ皆様、気をつけてお過ごしください。
この年は梅雨明けがはっきりしなくて、「もう、明けたんじゃないの?」と思わせるようなお天気が続いていた。毎日朝から晴れ渡り、午後から雲が出て来て夕立が来るというような感じのお天気だった。この日も・・・やはり良いお天気で、空は晴れ渡っていた。
当時私は、ダイエットを兼ねて自転車でツーリングするのが休日の楽しみ方だった。
買ったばかりの新しい自転車(MTB)に乗ってあちこち走り回っていた。学生時代に乗っていた頃の往年のパワーは望むべくも無かったが、それでも徐々に長い距離も走れるようになり、この日初めて、人吉ー八代往復ランに挑戦することにした。
【人吉ー八代往復】距離にして100kmあまり・・・
自転車に乗り慣れている人には大した距離ではないが、自分は数年ぶりに自転車を再開して二ヶ月ほど。
それでも・・・この少し前には70km走っていたし、このコースは特にきつい登り坂も無いので、100km程度は問題なく走れるはずだった。
人吉ー八代間は、急流で知られる球磨川の両岸を、国道219号線とJR肥薩線が交互に場所を分けあうようにして走っている。川の両岸は山が迫り出しており、V字谷の底を走るような格好だ。
さて・・・
この日は午前10時に人吉をスタート。
人吉から球磨村に入り、途中、R219から交通量が少なくのんびり走れる、JR線沿いの旧道に入り八代を目指した。順調に行けば3時間ちょっとで着くはずだ。
気温は高いが、球磨川にせり出した山陰の旧道沿いは案外日陰も多く、岩肌からは清水が流れ出ていたりする。こういうところを通ると、暑い中にもフッと涼しい風が肌を撫でて、とても心地よい。
それでもやっぱり真夏の陽射し。汗がぽたぽたと流れ落ち、持参した1.5Lのペットボトルはすぐに空っぽになった。しかし体力的には問題なく、スローペースながら着実に距離をこなして行った。
やがて・・・3時間ほど走っただろうか?
八代まであと少しの所・坂本の道の駅へ到着。トイレと水分補給を兼ねて、しばし休憩する。
そしてふと・・・何気なく空を見上げると、さっきまで雲ひとつなかった空に、白い雲が湧き出している。
「うーむ・・・」
空を覆い尽くすというほどではないが、このところ夕立が多いので、雲が増えてきたのが少々気になった。
「帰り道に、雨に降られたら困るなぁ・・・」
この時、「引き返そうか・・・」という考えがなかったわけでもないが、目的地まではあとわずかだし、ここで引っ返すのももったいない気がする。雨が降りそうになったら、汽車に乗って帰るという手もある。
そう思って、「え〜〜〜いっ、行ってしまえっ!!」と、八代へ向けて出発した。
これが・・・数時間後に迫る恐怖体験の序章になるとは、夢想だにしなかった。。。
午後2時頃八代に到着。
あまりにのんびり走りすぎたせいで、予定時刻を1時間近くオーバーしてしまった。短い休憩を取った後、人吉へ向けて元来た道を引き返す。
そして八代から坂本に入り、空を見上げる。すると・・・さっき通ったときと違って青空は消え去り、行く手にはどんよりと黒い雲が垂れ込めているのが見える。
「これは・・・やっぱりあの時、道の駅で引き返すべきだったかな?」
そうは言っても、来た以上は帰らなければいけない。とりあえず行けるところまで行って、「雨が降りそうなら汽車に乗って帰ろう・・・」と考え、そのまま進むことにした。
そしてほどなく、先ほど休憩をとった坂本の道の駅に到着。行く手の空は、黒い雲がさらにどんよりと低く垂れ込め・・・雨よりも落雷が心配になってきた。
そっと耳を澄ますと・・・かすかに雷鳴が聞こえるような気もするが・・・まだまだ、ずいぶん遠くの方で鳴っているのだろう。
ここまで来たんだし、行けるところまで行って、やばくなったら汽車に乗ろう・・・ひょっとすると、雨は降らないかも知れないし・・・
・・・と、実に楽観的に考えて・・・再び人吉へ向けて走り出した。
それから十数分後、私は荒瀬ダムの水を満々とたたえる川沿いの道を走っていた。
このあたりは球磨川に沿って走る国道219号線の中でも道幅が広く、対岸はJR肥薩線の葉木駅を少し過ぎた付近だ。
普段なら快適に走れる場所なのだが、頭上には黒雲がますます低く垂れ込めてきた。
さすがに・・・ここまで走ってきたことを少々後悔し始めた。まだ雷鳴こそ聞こえないが、頭上にあるのは間違いなく雷雲だろう。
もしここで雷雨に襲われた場合、肥薩線は川の対岸を走っており、あと数キロ走らなければ橋がない。しかも、ちょうど民家が途切れたような場所なので、近くには避難できそうな場所も見当たらない。
とにかく、雨も落雷もないことを祈りつつ、やや急ぎがちにペダルを漕ぐ。
そして・・・・・・
しばらく走ったところで、突然道路右側の雑木林の付近で、【バーーーンッ!!】という音が聞こえた。何かが弾けたような音に聞こえたが、いったい、何?!
この辺りは山が球磨川の近くまで迫り出しており、雑木林は右手に高く見上げるような格好になる。
それと・・・気のせいか、道路沿いの電信柱の電線が【ピカッ】と光ったような気がした。
「・・・なんの音だろう???」
そう思ったのは、ほんの一瞬のことだった。
次の瞬間・・・
【バリバリバリッ!!ドッカーーーン!!!】
・・・と、 これまでに聞いたこともないような大音響に襲われた!!
まさに【肝がつぶれる】とは、こういうことだろう。
私は何が起こったのか瞬時に悟り、凍りついてしまった・・・そう、【落雷】である!!
「・・・・・・・!!」(声も出ない)
受けた衝撃は相当なものだったが、とっさに自転車を道路右端に走らせた。電線には避雷針があるので、この下なら多少は安全だと考えたからだ。
・・・で、状況としては・・・・・
最初の【バーン】という音と、その次の大音響の間合いからして、自分がいた場所から少なくとも100〜200m以内に【落雷】があったということ。
しかも落雷の音からして、相当エネルギーの大きいものだったということ。
それが枝分かれして、私が走っていた横数メートルの電線にも被弾したこと。
1発目が来たということは、続いて2発目が来るということだ。
しかも、隠れるところはどこにもない。
【うわぁ〜〜〜最悪だ!!】
普通は遠くで「ゴロゴロ・・・」と雷鳴が聞こえてから、やがてだんだん近づいてくるというというパターンが多いのだが、この時はいきなり1発目で「ドッカーン!!」とやられてしまったわけだ。
幸い、電線の避雷針のお陰で直撃を免れたものの、この雰囲気・・・2発目が来るのは間違いない。空は真っ黒に重々しく垂れ込めている。
「お、俺は狙われている・・・」と、心中おののきながら、「どうしようか・・・?」と、考えた。
このあたりには身を隠せる場所も無いし、これから雨も降りだすだろうし・・・屋外は危ない。
それで・・・【生命の危機】におののきながらも、次の集落まで全速力で遁走することにした。
・・・とはいっても、そこまでは2km程ある。極力落雷の危険を避けるため、出来るだけ身を低くして、なおかつ全力でペダルを漕ぎ続ける。
ほどなく、予想通り・・・1分と経たないうちに【バリバリ!ドッカ〜〜〜〜ン!!】と、2発目の落雷があった!!
谷底のようなところを走っているので視界が狭く、どの辺に落ちたのかわからないが、これもすぐ近くのようだ。
「つ、次は、俺に落ちるのか?!」
雷というのはもともと、人間には落ちやすいらしい。ヒトの身体は電気を通しやすいからだ。
やがて・・・道路沿いに立っていた電柱も、いつしか途切れてしまった。
電線には避雷針があるのだが、これが無くなったということは・・・かなり危ない。
「雷に打たれた瞬間というのは、どういう感じだろう?」
「ひょっとすると、前触れの静電気とかで髪の毛が逆立ったりするのだろうか?」
「直撃を受けたら、ほんの一瞬で絶命するんだよな・・・」
「もうきっと、痛みとか何も感じないんだろうな・・・」
いろんな思いが、頭をよぎる。
【サイクリング中の男性、落雷で死亡!!】
翌朝の新聞の隅っこに、こんな記事が載るかも知れない。
そんなことを考える間にも、5〜6発の落雷があり、そのうちのひとつは対岸200mぐらいの鉄塔に青白い稲妻が走るのが見えた。
うぅっ!!これは・・・我ながらとんでもない危険地帯に足を踏み入れてしまったものだ。
しかし、「もし自分に落ちたら、運がなかった・・・それだけのことだ!!」と、開き直って、なおも走り続けた。避難場所のないところで立ち止まれば、直撃を受ける危険が高まる。
普通ならとっくに息も上がって脚もパンパンに張って動かないはずだが、この時ばかりは苦しいとか何も考えず、とにかく走り続けた。この間、時間にして5分余りだったろうか・・・
やがて集落のあるところにさしかかり、道路脇のお堂が目に留まった。
「こ、ここだ、、、ハァハァ・・・」
ちょうど近所の方がいたので、一言ことわって軒下を借りることにした。
「神は我を見捨てなかった・・・!!」
このお堂・・・どこの神さんが祀られているか知らないが、「助かりました」と、一礼した。
この直後だった。大粒の雨が落ちてきて、瞬く間に地面を叩き始めた。
さらに落雷もさっきにも増してすさまじい勢いで、ほとんど間髪を入れず【ピカッ!!】と光ると同時に、
【シュパーンッ!!バリバリバリ〜〜ドッカーン!!】と、大気を切り裂く雷鳴が、谷あいの集落に轟いた。
落雷があまりにひどいので身の危険を感じ、思わずお堂の中に逃げ込んだ。
何発かは、お堂のすぐ近くにも落ちたようだ。
屋内とはいえ、こんな粗末なお堂では心もとない。屋根を突き破って落ちてきそうな勢いだ。すぐ前の国道は川のように水が溢れ、なぜか通る車もほとんどいなくなった。
そして・・・小一時間ほども続いた雷様の饗宴はようやく終わり、いつの間にか雨上がりの静かな山あいの集落の風情を取り戻していた。さっきまでの轟音が、全くウソのようだ。
雨はほとんど止んで雷も遠ざかって行ったが、さすがにもう自転車で帰る気力は消えうせて・・・近所の家からタクシーを呼んでもらい、最寄りの駅まで自転車ごと送ってもらうことにした。
帰りの列車の中、分解した自転車を抱えてボーーーッとさっきまでの出来事を振り返った。
「運が悪けりゃ、今ごろ雷に打たれて死んでたかもなぁ・・・」と。
・・・ということで、大げさではなく【生命の危機】を感じたことで、ただでさえ怖かった【雷】が、ますます恐ろしくなってしまった。
このあとしばらくは、雲ひとつない晴天の空の元でも、ときおり【雷光】が見えるような錯覚を覚えて、思わず【ビクッ!】と身体を震わすような、いわゆる【トラウマ状態】に陥ってしまいました。
もちろん今でも、雷は【大嫌い】であります。外で雷に遭ったら、一目散に逃げ出します。
でも、決して【ビビリー】と馬鹿にしてはいけません。雷鳴が聞こえた時点で、あなたはもう雷の【射程距離】に入っているのですから。
皆さんも外で雷に遭ったら、【まだ遠くだから大丈夫】なんてのんきに構えずに、一目散に逃げ出すことをおすすめいたします。
あ、それと【木の下】は一番やられやすい場所なので、雨宿りされる際は気をつけましょう。【木】に落ちた雷が、下で雨宿りしてる人に飛んでくるのです。【側撃】というやつです。
それから、人間が集団でいるのも雷様を呼び寄せるそうなので、ご注意を・・・
まあ、とにかく、これから雷の季節なので、アウトドアで楽しむ皆様、気をつけてお過ごしください。